オーケストラとの出会い

時は10年ほど前にさかのぼり。

高校時代、女子高で合唱を割とマジメにやっていた私は、
ハレルヤ・コーラス」とベートーヴェン「第九」
歌うことに憧れていた。
ちなみに、「ハレルヤ・コーラス」は女声合唱のみでも
歌えたため、かなり頑張って練習したが、
「第九」だけは、どうしても混声だった上、
ソリストが4人いるという曲だったので、
女子高、しかも10人いるかいないかの弱小部では
到底、手の届かない存在だったのだ。

だから、
「共学の大学に行って、合唱部に入れば、
 きっと歌えるに違いない!」
と思った18歳の私がいたことを、誰も責められないと思う。笑

さて。
さまざまな期待を胸に、大学に入学。
そこかしこに、部活の勧誘の先輩がいて、
しきりに話しかけてくる。
でも残念。私は合唱部に入りたいの。
…と、いきなり言うのも失礼なので、
構内をうろうろしながら合唱部の勧誘を探してみた。

ところが、2日かけても、合唱部の勧誘は見当たらない。
文化会という、文化系の部活を統括しているところを知って、
勇気を出してたずねてみたところ、
「合唱部なら、今は部室はあるけど部員はいないよ」
と言われた。

ということは、だ。
私が仮に合唱部に入部したとして。
それって、『独唱部』ですよね?
第九どころか、混声合唱にすらならない。
おまけに、他大との接点も交流もない。
どうしよう…
(まぁ、今考えれば、いくらでも方法はあったはずなのだが。)


そうして道端で途方に暮れているところで、
ショートカットで丸メガネの、人のよさそうな女性が声をかけてきた。

「オーケストラとか、興味ない?」

思えば、あれはひとつの運命だったのか。