PRO‐LOGUE
どこの人かなんて関係なくて、
ただ、それが好きだからここにいる。
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私の生まれは秋田、戸籍は山口、生まれて最初に住んだのは大阪、それから千葉、埼玉、トウキョウ。
私には、「私の街」と呼べる故郷がない。
だからなのか、ひとつのところにじっとしているよりも、
色々な場所を点々としている人生を送っている、気がする。
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オケを始めたのは大学時代。
いろいろなボタンをうまく掛け違って、出会ったモノ。
ボタンを掛け違ったのは、偶然か、必然か。
掛け違い続けたのも、偶然か、必然か。
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楽器を始めて1年。
私は、大切な人をなくした。
その人は、私が演奏する舞台を一度だけ観にきた。
正確には、一度しか観に来られなかった。
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その人との、最後のつながりが楽器であり、オーケストラで。
今でも、どこかで聴いているのではないかという気がする。
ただ好きだからここにいて、
あの人とのつながりを感じていたいからここにいて。
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あの人が聴いた最後の曲は、私が演奏する曲ではなかった。
いつか演奏したいと思い、10年目。
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10年の間に、楽器を通じてたくさんの人と出会った。
都合さえつけば、どこの楽団でも手伝いに行ったし、
それ以外でも、音楽は私と世界をつないでくれた。
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「最後の曲」を演奏する機会は前触れもなく訪れ、
それはまぎれもなく、この10年で音楽が私に与えてくれた絆で。
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2010年、8月28日
一夜限りで、いろいろな楽団を渡り歩く
吟遊詩人――トルバドール――たちが、ひとつの音を導き出し。
夏の一夜に、打ち上げ花火のように盛大で華やかな、集いを。